3時間近い尺を考慮して午前中の回で観てきた。
35年前に公開された名作SFの続編だが、前作を観ていなくても普通に楽しめると思う。
デートで観るには彼女や嫁さんに苦行を強いる可能性は確かにあるが(つまりマニアックな世界観を描いているため)前半部を我慢すれば後半クライマックスパートでカタルシスを得られるので鑑賞前にある程度の根回しは必要かも。
前作同様物悲しいお話である。
無理、不可能なのがわかっているが故の耐えられない感情というか。
レプリカントとバーチャルAIの恋愛とか。
言葉にすると陳腐だが、この世界観の中で見せられると妙にリアリティがあってバカにできないのである。
男の側から理想化されたつくした感のAIのビジュアルを演じたアナ・デ・アルマスが見事に嵌っている。
若干スパニッシュなまりの英語が可愛さを助長しているし。
うーん、キャスティングの妙としか言いようがない。
レプリカントのブレードランナー役のライアン・ゴズリングは感情をほとんど表に出さない(人工物なのだから当たり前なのだが)のに逆に感情の機微が伝わるところは流石だ。
ブレードランナーの仕事をする場面は冒頭のパートだけで、その後はアイデンティ探しの旅というか探索作業というか、それが作品の骨格になっている。
子供の頃の記憶、木彫りの木馬、レプリカントの受胎、がキーワード。
特別複雑な展開はなく順番に謎解きされるのであるが、結論は二転三転するので観客に先を読ませない工夫はある。
一応運命の糸で人間関係、じゃないレプリカントと人間の関係が結ばれている点はロマンティック。
K(ジョー)のアイデンティ探しの過程で記憶の根拠を探るパートに登場する浮世離れした学者の女性がKを検査中に涙する点が不可解なのだが、最後の最後にその理由がわかりホッコリさせられる。
近未来を描いた世界観、映像は前作同様陰鬱で希望を感じさせないものだが、実は以外なほどエモーショナルで、人によっては涙するシーンもある。
「カルトなSF作品」の先入観なしに観れば長尺も苦にならないのではないか。
リドリー・スコット監督の前作同様、SFやファンタジーの苦手な僕でも十分楽しめたのだから。