Textbook fight

 

タイトルを直訳するとお手本のような試合ということだが、

当てはまるワードが見つかわらず苦し紛れに捻り出した感じだ。

過去観戦したクラシックファイトの中で再見する価値がありチェックポイントの多い(観戦力を養える)試合のことを指している。

ファイターの戦術意図に基づいた起承転結がはっきりしているという意味や、

後に他の試合を観戦した際のガイドラインに成り得るという意味や、

現役ファイターの能力を測る尺度にもなり得るという意味もある。

まあ色々な意味をまとめて簡潔に表したいのだ。

一方のファイターがビッグネームというパターンが多く、結果的に相手は引き立て役になってしまうが、それでも持ち味は発揮できているのでワンサイドというわけではない。

 

総合力の高いレジェンドファイターとして真っ先に頭に思い浮かぶのは、

マービン・ハグラーだ。

子供の頃リアルタイムでピークレベルを観ていたこともあり強い印象が残っている。

雑誌メディアのみで知っていたレジェンドは多かったのだが、大体は後にリアルを知ってイメージとのギャップに失望する。

雑誌のライター自身が自分で観た試合を記事にしているわけではなく、AP電など海外のメディアからの情報を買って掲載していたのだから仕方ないが。

当時テレビ東京が海外のボクシング試合をビッグマッチを中心に放送してくれていた。

解説者はジョー小泉だった。

40年前の話である。

ボクシング観戦が娯楽の中心だった僕がそれをどれほど楽しみにしていたことか。

放送予定を知ってからその試合のことばかり考えていた。

ゴールデンタイムに民放キー局が海外のビッグマッチを試合を放送していたのだ。

今振り返ると信じがたい。

多分局のキーパーソンがボクシングファンだったのだろう。

ハグラーの試合を初めて観たのはテレ東の番組でだ。

確かタイトルマッチ数試合を組み合わせて番組にしていた。

「ハグラー特集」的な。

既にスターボクサーだったし勿論ハグラーのことは良く知っていた。

ボクシングメディアからP4Pキング評価だったハグラーを実際に観て感銘を受けた。

「こんなテクニカルなファイターだったんだ!」

ほとんどの試合で相手を倒していたので、もっと好戦的なハードヒッターのイメージを持っていた。

筋骨隆々でスキンヘッドの見た目も凄みがあってそのイメージを助長していた。

が、映像の中でリングをサークリングしながらジャブを突きまくるハグラーはどう見てもボクサータイプである。

チャンスで畳み掛ける鋭さがあるのと、手数と的中率という相反する要素を両立できるスキルと体力を持っているため、観戦者に分かりやすく倒してしまう。

不意にビッグパンチを当てたりとか、

狙いすましたカウンターで試合を決めてしまうとか、

そういう偶発性というか不意のエンディングがない。

そしてアリのような無駄な動きやショーマンシップもない。

とても几帳面なある意味型にハマったボクシングスタイルだと思う。

それでも堅苦しさや退屈感は微塵もなく、カタルシスをしっかり与えてくれる。

こういうファイターは稀有だと思う。

 

 

 

正にピークレベルを見せつけていた頃のシブソン戦は大好きな試合だ。

何回も観たし何回でも観れる。

馬力のあるブルファイターのシブソンを見事に捌き見事に倒した。

なんて分かりやすい試合展開なのだろう。

この頃のハグラーが一番好きかな。

デュラン戦あたりまでがピークレベルだったと思っている。

それ以降はレベル的には下降線を辿っていた。

ムガビ戦などは、

「ハグラーどうした?」

と思わざるをえない荒い戦いぶり

あからさまなにカウンター狙いのムガビに真正面から突っ込んで行くから無用に被弾が多くて顔を腫らしていた。

耐久力に自信を持っているが故だろうが、勇敢なだけでらしくない下手くそなボクシングだ。

手数でムガビを圧倒しただけの内容で技術的な見所はほとんどなかった。

リングサイドで観ていたレナードに、

「このハグラーになら勝てるかも。」

そう思わせてしまった可能性がある。

マーベラスな(パーフェクトな)ハグラーを観たければシブソン戦、ハムショ戦、ロルダン戦あたりがオススメだ。

馬力のあるファイタータイプとのマッチアップ時こそ彼の真骨頂を確認できると思う。