アンドレ・ウォード vs チャド・ドーソン

WBA・WBCスーパーミドル級タイトルマッチ アンドレ・ウォード vs チャド・ドーソン/カリフォルニア州オークランド>

ライトヘビー級(175lbs)タイトルホルダーで同クラスナンバーワン実力評価のドーソン対スーパーミドル級(168ポンドlbs)タイトルホルダーで同様評価のウォードという好カード。
ウォードのホームかつウォードのタイトルにドーソンが挑戦という図式はウォード陣営にイニシャティブのあるマッチメークだったのでしょうか。無敗ですしスーパー6トーナメント覇者という肩書きもありますし本国でのステイタスは高いんでしょうね。きっと。


ライトヘビー級からウェイトを落としてスーパーミドル級に参入した例としてはグレン・ジョンソンがいましたが、あまりパッとしませんでしたね。確かスーパー6トーナメントの欠員要員としてでしたっけ。
結論から言うと、ドーソンもパッとしませんでした。ウェイトを落としているためでしょうか両者のサイズの違いやパワーの差を感じることはなかったですね。
ライトヘビー級時代は恵まれた素質(体の大きさ、運動能力の高さ、サウスポーの利点)を生かして相対的に対戦相手との力量差により勝ち続けていましたが、地力が付くようなマッチメークをしてこなかった印象があります。
一方のウォードの直近の5試合の相手は、カール・フロッチ、アーサー・アブラハム、サキオ・ビカ、アラン・グリーン、ミッケル・ケスラーとツワモノばかり。フルラウンド戦った試合が多いためか強いインパクトはないですが、ほとんどの試合はワンサイドマッチです。相手に付け入る隙を与えないのがウォードの特徴ですよね。
ところがこの試合のウォードは地元ということでモチベーションが高かったのでしょうか、今までにない目の覚めるような快勝劇を演じてくれました。

試合を観終わってすぐ連想されたのが「フロイド・メイウェザーJr vs ディエゴ・コラレス
似た展開だったと思います。
要所で左フックを決めてダウンをとりつつ試合をコントロール、相手の警戒が左フックに集中すると今度は左を打つぞ打つぞとフェイントに使いながら右のショートを当てたりとほぼやりたい放題。
ドーソンは中間距離でしか芸がないので距離を殺されたり逆に離れてボクシングされると成す術がなくなっていました。特に接近戦は全然駄目。
ダウンの影響もあるのでしょうがペースを取られてズルズルラウンドを重ねたというよりなんとか生き延びたていただけの10R。10Rのダウンの後レフェリーのスティーブ・スモーガーにカウントを取られている最中にギブしてしまいました。

アンドレ・ウォードはびっくりするようなスピードがあるわけではないですしハードヒッターというわけでもない。
でも強い、というか負けないボクシングをする印象があります。
ボクシングIQの高さを感じますし、本来持っている能力をキャリアを積むことでさらに磨いたのでしょう。
戦術の柔軟性、リクスマネジメント意識の高さ、相手のストロングポイントを消してしまうゲームプランをどの試合でも堅実に遂行する能力に長けているのではないでしょうか。
無駄打ちしませんし、自分のリズム、ペースを崩しませんからスタミナも浪費しません。
10R、フィニッシュの場面ではガタガタと崩れていくドーソンを追跡しながら繰り出す左右の連打は全部当たってますからね。凄い的中率です。

28歳とまだ若いウォード、派手な倒し屋ではないので一般受けしないかもしれませんが、今後は存在感を際立たせていくでしょうし、芯の太さを感じるタレントなのでしばらくは勝ち続けるのではないでしょうか。
打たれ脆くないことが前提ですけど。