ジョー・ルイス vs ビリー・コン第1戦


<世界ヘビー級タイトルマッチ ジョー・ルイス vs ビリー・コン 1941/6/18>

ジョー・ルイスの世界ヘビー級タイトル18回目の防衛戦はクラシックファイトとしてあまりにも有名なビリー・コン戦。
12Rまでポイントでリードしていたビリー・コンはルイスを倒しにいって逆転KO負けをしたとされています。
ほんとにそうでしょうか?


12Rまでの採点は7−5,7−4でビリー・コンのリード2人と6−6が1人。
結構ポイントは競っているんですね。
実際の試合映像を見ても決してビリー・コンが一方的にペースを握っている感じはありません。
この試合のルイスのウェイトは1991/2ポンド。一方のコンは174ポンドとライトヘビー級のリミットすら下回っています。25ポンドのウェイト差はそのままパワーと耐久力の差になっている感じです。
コンは非常に上手く戦っていましたが、いかんせんパワー不足は否めない。
ハンドスピードを生かしてクリーンヒットこそ多かったもののルイスにダメージを与えていたわけではありません。
一方のルイスはジワジワとプレッシャーをかけつつ単発ですが強打を当て続けています。
この圧力とたまに当たる強打でコンはかなり疲弊していたと思います。
ところが12Rにコンの左フックダブルがクリーンヒットしルイスがバランスを崩します。
効いている感じはないんですけど、ここでコンはかなりパンチをまとめ優勢を印象付けることに成功してます。
その勢いで13Rにも手数を出すのですが、前がかりになったところでルイスの右のカウンターを喰ってしまいます。
その一発が分岐点になりあとはルイスが一気にたたみ掛けるのですが、ルイスの連打は回転こそスローですが、一発一発のパンチが実に正確で確実にコンを捉えています。
この詰めの見事さは流石としか言いようがありません。

こんな古い試合を持ち出したのは、先日のマルティネスvsチャベスJrの試合展開に不満があったからです。
チャベスJrは最終回、後一歩のところで結局逆転KOしそこねました。
結果論承知で書きますが、
もし11Rまでにもっとマルティネスにダメージを与えることが出来ていたら?
そもそもスピード差があれほどあるにも関わらず確率の低い大振りを繰り返したのは単にショートパンチを打つスキルがなかったからなのか?
手数そのものが極端に少なかったしジャブを出しながら追跡しないから出鼻を叩かれ続けていたが、展開を変える術をセコンドは授けようとしなかったのか?
結局11Rまでが一方的過ぎた。
チャベスが示したのはタフネスだけ。
でもね勝ち目はあったんですよ。
単発でも各ラウンドで数発のクリーンヒットを得ていれば、マルティネスはもっと落ちていたはずなんです。
肉を切らせて骨を断つ戦法は否定しませんが、ワンチャンスで全て解決しようとせずに多少なりとも伏線ってもんが必要でしょう。
その程度のことはチャベスJrにも出来たはずです。

ジョー・ルイスはビリー・コンに右アッパーを効果的に当てていました。
コンが体を預けて休もうとするとアッパーを突き上げるのです。
結果的にコンはクリンチに逃げることができず心身の疲労を蓄積していったのでしょう。
ポイントを多少取られても相手の戦力を確実に削いでいく手段を講じていれば最後の最後で勝ちきることが出来ます。

マルティネスは逃げませんからきっと再戦が行われるでしょう。
まあ、マルティネスの足を止めるのは難しいでしょうが、終盤に捕まえるための布石は打っときましょうね。
それとせめてマルティネスの半分は手を出そう。
やることやれば十分勝つチャンスはあると思いますよ。
ボクシングセンスは?ですが、肉体的な素質ではマルティネスを凌いでいますからね。