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 西岡利晃 vs ノニト・ドネア

<WBC・WBOスーパーパンタム級タイトルマッチ 西岡利晃 vs ノニト・ドネア/米国カリフォルニア

ボクサーのストロングポイントは一般的に、ハードヒッターであること、スピードがあること、打たれないこと(ディフェンスが上手いこと)、耐久力があること(タフなこと)が挙げられます。
打たれなければタフである必要はなく、スピードがあればハードヒッターである必要がないと考えることもできますが実際にはまったく打たれないボクサーはいませんしスピードとパワーは物理的には相関関係にありますから個別要素と切り離すことはできません。


攻守の切替が激しいコンタクトスポーツであるボクシングと言う競技は「打たせずに打つ」を実践(実現)すれば試合に勝つことができます。
でもそれは単純過ぎる理想論であって実際には相手の戦力分析から導き出された戦略をベースにゲームプランを作りこみ、トレーニングに反映させ、試合で実践するというプロセスを辿ります。
万能なボクサーはなかなか居ないのでそうなるのですが、結局は相手のストロングポイントをいかに殺すか、自身のストロングポイントをいかに生かすかに腐心することになるわけです。
3分×12Rのなかで準備してきたものを出せるかどうか、そして準備してきたものに自信が持てるかどうかを明らかにする場が試合なんだと思います。

ドネア戦での西岡の戦略は「打たれないこと」を中心に練られていたようでオフェンスの戦術的なポイントは試合の中では確認できませんでした。
ドネアのパンチに耐える耐久力に関して低く自己評価をしていたようで、それは実際に少ないクリーンヒットで倒されてしまった事実から正しかったのかもしれません。
直近の試合のドネアがKO意識過多のために攻防のバランスが悪く結構被弾していたことにフォーカスしてしまっていたのでしょうか、ディフェンスを固めていればドネアの攻撃意識が空回りして隙が生まれ左を打ち込むタイミングが必ずできると計算していたように感じました。
現実にはドネアは西岡が左を打ち込んでくるタイミングとアングルを実に正確に予測していて、これは!と思う西岡の左の強打は全て右のグローブでブロックできていました。
西岡の右手はブロックすることにしか使わせていないこともドネアサイドのディフェンスプランをシンプルかつ正確にできた理由でしょう。
慎重に試合を運んだはずの西岡が逆に外堀を埋められる格好で敗戦のシナリオを描かされていたのではなかったかと。
攻守のモード切替がポイントだと思っていましたが、西岡はオフェンスを仕掛けるタイミングを作れませんでした。
ドネアのフットワークが良かったですね。
小刻みで素早いフットワークで西岡は攻撃のタイミングを消失させれ、かつ上下左右いろいろなアングルからスナッピーなドネアのパンチを警戒しなければならない状況を作られてしまいました。
小刻みで素早いフットワークは西岡にもあるのですが、ドネアがそれを上回る能力をみせていたがためにアドバンテージを取られて封印されてしまった。ここにもドネアの勝機の一端がありますね。

ベテランの西岡にとって1年間のブランクを肯定的に見ていたようですが、試合勘の鈍りもあったように思います。
試合前半ゲームプランに固執しすぎていて窮屈に戦っていたように見えましたからね。
長いキャリアで築き上げた戦術の幅を披露できなかったのは勘の鈍りが影響していたのでは?
ダウンを喰って目を覚ましたようにオフェンシブになったこともそのことを裏付けていると思います。
ドネアは確かに強敵ですが、リスペクトし過ぎて自分の持っているものを出せなかったとしたら残念です。
実力で大きく劣っていたわけではないでしょう。
ボタンの掛け違いに気付くのが遅かっただけと解釈したい。

今後、西岡と同じステージに日本人ボクサーが上がれるかどうか、同じポジションを掴めるかどうかを考えたとき、決して西岡の今回の敗戦を実力不足で斬り捨てられないことがわかります。
彼は日本人として誰一人成し遂げたことのない最高のステータスを掴みかけた先人として記憶されるべきであり残念ながらあと一歩それに届かなかっただけです。
バンタム級時代、ボクシングファンから一度は「終わったボクサー」とみられた西岡が這い上がって今のポジションにいるのですから凄いことですし、もう十二分に高い実力を国内外に証明していますよ。


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