ヒトリシズカ

ヒトリシズカ (双葉文庫)

ヒトリシズカ (双葉文庫)

内容紹介
見えそうで見えない。手が届きそうで届かない。時と場所、いずれも違うところで起きる五つの殺人事件。その背後につらつく女の影。追う警察の手をすり抜ける女は幻なのか。いまもっとも旬な著者の連作ミステリー。
内容(「BOOK」データベースより)
Amazon.co.jp: ヒトリシズカ (双葉文庫): 誉田 哲也: 本


WOWOWの連続ドラマ『ヒトリシズカ』を全6話観ました。
面白かったので感想を書こうと思っていたのですが、最終話がどうも納得がいかないというか尻切れトンボの感を持ったので誉田哲也著の原作を読んでからにしようと思いました。
小説は6話から構成されていてそのタイトルはドラマと同じ。
時間と場所の違う殺人事件を追うそれぞれの刑事たちの視点で捜査内容が語られながらストーリーが進行していきますがどの事件の背後にもミステリアスな女性の影がちらつきます。それが静加なのですが。
ドラマはほぼ原作に忠実に作られていましたが、短編小説を連続ドラマにしたことによる無理な演出が垣間見れました。
尺の関係だと思われますが原液を薄めるかのような付け足しのような余計なシーンがあったということです。
そのため肝心の主人公の人間像がブレてしまっていたのがちょっと残念だったかな。
ドラマにおいては主人公『静加』はただただ邪悪な人間にしか描かれておらず、それであればいっその事稀代の悪女モンスターを描ききってしまえばまだ理解できたのですが最終話で急に孤独感や悲しさを見せて完結されてしまうので視聴者を迷子にしてしまっています。つまりギャップが激しすぎるということで。
最後に?マークが出てくるのはいただけなかった。
原作でも明確に犯罪を犯す静加の行動原理が読み取れるわけではないのですが、傍目には邪魔者を次から次へと殺しまくっているだけのようですが、実際は父親への接近を試みる過程での不可避なトラブルの結果であり、殺された人間はヤクザやチンピラといった静加が忌み嫌う人種であり、ある意味、社会悪に対して天罰をくだしている(法的には犯罪でよくないことではあるが)ものと捉えることもできなくもない。自身の安全や利益を守るため、あるいは大事な人間を守るために家出少女が最も合理的な手段を用いただけなのかもしれない。
なにしろ静加は8歳の時に同居人である母親の男に児童ポルノを強要されていて、13歳で売春行為をしていたのである。子供ながらに裏社会の闇のかなをのし歩いてきたわけですから年齢不相応の処世術を身に着けていても不自然ではない。まともな社会生活(集団生活)をせずにつまり人並みなモラルを身に付けずにティーンエイジャーが世渡りをしなけれならなかったわけですから邪魔者を排除するとう無慈悲な側面はある程度必要なのかもしれない。
小説の場合、イマジネーションを働かせる余地があるためこういった読み手の脚色が可能ですが、テレビドラマの場合そうはいかず難しいのでしょうね。
ドラマは言わずもがなですが、原作もかなり隙間が多く説明不足が否めない作りなのですが、静加のキャラは独特で魅力的なので、読者が自分の価値観、想像力で足りない部分を補い、静香のキャラを完成させていけばそれなりに楽しめるのではないでしょうか。少なくとも僕の場合そうでした。
提供される素材は良いということですね。
それと警察組織の官僚的な側面を皮肉るのに静加という少女に翻弄されるという設定はありなのかなと思いました。