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オーランド・サリドとホセ・ナポレス

先日、ワシル・ロマチェンコに黒星を付けたオーランド・サリド。
何故こんなに打ち合いに強いのでしょう。
彼の技術的な分析ってあまりお目にかかりませんよね。
『叩き上げて身に付けた地力』とか
『メキシカン特有の』とか
都合のいい表現で片付けられているからでしょう。
無尽蔵のスタミナに支えられたノンストップアタックスタイルであることや、
多少打たれてもへっちゃらな頑強な身体の持ち主であることは
とりあえず置いといて、
もっと具体的なスキルにフォーカスしてみたいなと。


まだ現役のトップレベルですが、おそらくサリドのキャリアハイライトと言って良いファンマ・ロペス戦。
この動画がダイジェストだからということもありますが、まあ良く手が出てますよね。
攻撃が全てのボクシングでしょうか?
違います。
しっかりしたディフェンススキルがベースにあるからこそのオフェンシブなスタイルなのです。
ロペスとの打ち合いを観れば一目瞭然。
どちらがより相手のパンチをよけているか?
比較の対象がロペスだからよけい際立つのですが、
サリドは素早くて動作の小さなスウェーバックやヘッドスリップでパンチを避けつつ
連動した動作で手を出しているんです。
結果的に相手の打ち終わりのタイミングが自身の初動の切欠になりますから
的中率で上回れるんです。
パンチングパワーはロペスの方が上ですよ。
でもまともに貰わなければいい。
かといってブロッキングでよけていたのでは自身なかなか手が出ないし、
相手に脅威を与えられなければ劣勢を強いられてしまう。
よけて間髪を入れずに打ち込むスタイル。
そいつを突き詰めていくと防御と攻撃の切替時のギャップが少なくなり、
究極にはギャップ=ゼロ、つまり攻防一致になります。
そんなことができるのか?
実践していたクラシックファイターがいるのです。
ホセ・ナポレス。
彼のディフェンスルーティンにブロッキングは皆無。
左右の手はパンチを打つことだけに使われている。
最初に観た時はびっくりしましたけどね。
信じられないほどナチュラルにパンチをよけるんです。
で、よけた瞬間にもう加撃している。
だから攻撃の密度が濃い。
ナポレスのストロングポイントは相手を疲弊させる攻撃の密度なんです。
それはヘッドスリップを軸にしたディフェンスルーティンがあるからこそ。
ちょっと似てませんかサリドと。
もちろんナポレスとサリドを同列に論じることには抵抗があります。
でもね、似ている点がもう1つ。
パンチの軌道です。
フォームを見るとグローブの位置が顎より下、
つまりやや低い位置でリラックスして構えている。
そこから斜め上にやや湾曲させて突き上げるようにパンチを出すことが多い。
特に打ち合いの時はコンビネーションに必ず混ぜてくる。
アッパーとフックの中間の軌道ですが、ノーモーションでかつ
グーンと伸びてくる感じ。
まあメキシカンが良く打つパンチだと言えますが、特に顕著です。
下からパンチがくるんですよ。
動体視力って下からの軌道に上手く対応しませんよね。
しかもパンチが当たると身体を起される。
つまり懐に潜られる。
そしてまた下からパンチがくる。より視界に捉えずらくなる。
自身のアドバンテージを理詰めに獲得出来る戦術だと思います。
サリドもナポレスもそれを機械のように正確に実践しているんです。

なぜロマチェンコは執拗にクリンチしたのか。
これはサリドの下からの攻撃力とミドルレンジでの防御力がロマテェンコにとって想定外のレベルであり、
結局身体を合わせるしか選択肢がなかったからでしょう。
でないと潜られて最後は自身のディフェンスが決壊してしまいますからね。
やはりジャブで突き放すべきでしたよね。
そこからストレート中心のオフェンスを組み立てていれば勝てたのではないでしょうか。
サリドにはナポレスのようなジャブをヘッドスリップで外すスキルはないですからね。