ショートレビュー クロフォード-インドンゴ

 

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Date: 2017-08-19

Where: Pinnacle Bank Arena, Lincoln, Nebraska, USA

Division: light welterweight (140 lbs, 63.5 kg)

Title: IBF, WBA, WBC, WBO World Super Lightweight titles 

 

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マッチアップ:★★★

スリル:★★★★

スキル:★★★

印象度:★★★★

 

 

トップランクいやボブ・アラム(そう言えば最近あまりメディアに露出しなくなったが)はクロフォードというタレント(駒と言ったほうが良いか)をどう使うつもりなのだろう。

僕が注目しはじめた頃から比べたら序列がずいぶん上がったけど、

マネー、失礼、マニー・パッキャオに変わる看板になるとはまさか思ってはいまい。

グッドスキルを持ったローカルヒーロー

というキャラが色濃くなりつつあるが、全国区、いやワールドワイドに知名度を上げることが可能なのか?

良く言えば玄人受けするタイプ、まあ言ってしまえば地味な強豪を無理やりヒーローに仕立て上げようとすると、過去の例を持ち出すまでもなく上手くいかないことが明らか。

つまり派手で一般受けするファイトをやらせたら碌なことがないのだ。

アンドレ・ウォードやバーナード・ホプキンスのようなゴーイングマイウェイタイプが結局は名を残すわけだから。

コアなファンにも理解しがたいスイッチスタンス、というかコンバートサウスポーのクロフォードの魅力はちょっとわかりにくい。

強いには強い。

が、なんども書いているようにプロボクシングはそれだけでは駄目だ。 

際立ったスピードスターであったり、わかりやすいハードヒッターの倒し屋であったり、という観戦者の印象に残るパフォーマンスをリング上で見せつけること、時世に乗ったビッグネームたちとのサバイバルに勝ち残ること 。

ビッグマーケットを担うプロモーターの仕事はタレントたちを上手に使って絵(構図)を書くことだ。

もちろんヒールも必要だが、ヒールが時にヒーローに化けることも許容する。

僕がクロフォードのマネージャーだったら、ウェルターウェイトに上げることをしばらく自重する。

減量がキツくないのだったらね。

インドンゴ戦の良いパフォーマンスを観た後では尚更そう思う。

誰とマッチアップするか、誰に勝ったかはもちろん大事だ。

それこそがファイターの履歴書なのだから。

もうひとつ、リング上のパフォーマンスという大事な要素がある。

近々クロフォードがウェルターウェイトのトップレベルとマッチアップしたところで、勝つかもしれないが(スペンスは避けるべき)かなり戦術的な地味ファイトになるだろう。

一般的なスポーツファンはそういう試合をあまり歓迎しないものだ。 

しかもウェルターウェイトの強豪たちよりクロフォードの方がネームバリューがある状況ならリスクを負うだけになってしまう。 

ホプキンスの厚い壁にあっけなく跳ね返されたトリニダードデラホーヤの例が記憶に新しい。

実力を過信したのか功を焦ったのかエイドリアン・ブローナーのグダグダなキャリアも失敗例だろう。

彼は今リングマガジンのウェイト別のランキングからも名前が消えてしまった。

碌に検証せずに先物買いしたことを反省しているのだろうか。

見せしめ感というか懺悔感というか冷たい空気を感じる。

確かにスーパーライトウェイトというのは中途半端なクラスではある。

昔はステイタスが低くやや軽視されていた感もあった。

ライトウェイトタイトルホルダーのロベルト・デュランはリスクを犯して一つ上のクラスのアントニオ・セルバンテスをターゲットにしなかった。

73年〜75年頃にそれをしていたら敗戦した可能性が高い。

(レイ・アーセルに止められたのでは?彼はセルバンテスの高い実力を目の当たりにしていたから)止めたが故その後のデュランの栄光のキャリアがあると僕は思っている 。

ステイタスアップのために上の階級のタイトル獲得を目指すことがナンセンスと言っているのではない。

そういうインベーダー路線を突き進むためにはタイミングを計ることも重要。

ベンチマークすべき例としてはデュランの他に、シェーン・モズリーとか。

クロフォードは体格的にも同程度でしょ。

いきなりタイトルホルダーの強豪に挑むのではなくウェイトアップした後にテストマッチのような形で上位ランカーと手合わして上のクラスのファイターのパワーや耐久力を実感して慣れていくというプロセスを踏むことだ。

急がば回れ

クロフォードの今後の活躍に期待する。