147ポンド

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学生時代、ホールに試合の度に観戦に行ったお気に入りのボクサーが二人いた。

一人はJフライ〜フライウェイトのレパード玉熊

もう一人はライト〜ウェルターウェイトの尾崎富士雄。

二人には出身県を含めて共通点が多い。

大柄な体格、基本の出来たボクサータイプなのだがオフェンシブであること、あまり打たれ強くないこと、敗戦を肥やしにしてスタイルを変えつつムクムクと頭角を現してくる右肩上がりのキャリアなど。

尾崎に関してはファンと言っても良かった。

彼の試合を最初に生観戦したのは成田城健戦(2戦目)。

間近に見た尾崎は、ライトウェイトとは思えないほど大柄で、それでいて動きがシャープ、ちょっとした驚きでしたね。

それまで彼に関してはややネガティブなイメージを持っていて、

それは全日本新人王戦で赤井英和にKO負けした試合をテレビで観ていたから。

良く知りもしないのに低評価をしていたが実は良いボクサーだと知ると、

僕の場合途端にご贔屓となることがある。(ex.ドワイト・ムハマド・カウイ)

尾崎は減量苦のためライトウェイトに見切りをつけてウェルターウェイトに転級、

その後メジャータイトルに2度チャレンジするなど応援しがいのあるキャリアを送ってくれました。

尾崎が挑んだ147ポンドクラスは、当時(今でも)日本人とは無縁だった。

シュガー・レイ・ロビンソンやホセ・ナポレス、ハーンズやレナードが活躍したクラスなのだから、東洋人は場違いというイメージを持っていた。

ちなみにフィリピンの英雄パッキャオは異端というか突然変異の極み的な存在なので、唯一のみたいな取り上げ方はしない方が良い。

名前を売って以降北米マーケット主戦場でしたし、そもそもナチュラルなウェルターウェイトではない。

日本人ボクサーにとって147ポンドクラスがどれほど高いハードルだったかは過去のデータを振り返れば一目瞭然。

まあ、チャレンジ機会そのものが少ないのだけど。

尾崎は相手がスターリング、ブリーランドですから戦前から厳しいだろうと、期待は薄かった。

急遽決まったスターリング戦など、

「きっとあっさり倒されるのだろうな」

と悲観的に観ていたくらいだもの。

結果的に善戦して、

「アメリカのリングで恥をかかなくて良かった」

と負けたのにホッとしたことを憶えている。

 

昔から漠然と思っていたのは単一民俗国家である日本からはウェルターウェイトのスターボクサーは現れないだろうなということ。

67kgというと、何処にでもいそうな体重を連想するだろうけど、減量してそれだから。

普段は72~75kgで身長も175~180cmとなると、日本人の場合そう多くはない。

平均値以上の体格があり、スポーツ好きで運動能力の高い若者がボクシング競技を選ぶとは思えない。

つまり土壌自体が貧弱なのだ。

そこからケル・ブルックやキース・サーマンみたいなタレントが出てくるのか?

ないない。

僕は40年近くボクシングファンをやっているが、その間一人として現れないのだから。

 

<147ポンドの高い壁に挑んだ先人たち>

 

辻本章次 vs. ピピノ・クエバス

1976-10-27 : Pipino Cuevas 145¾ lbs beat Shoji Tsujimoto 146¾ lbs by KO at 2:29 in round 6 of 15

Location: Jissen Rinri Hall, Kanazawa, Ishikawa, Japan

Referee: Carlos Berrocal 24-23

Judge: Roque Larios 24-24

Judge: Takeshi Makimura 24-25

WBA Welterweight Title

Tsujimoto was knocked down three times in the 6th round. 

 

 龍反町 vs. カルロス・パロミノ

1978-2-11 : Calos Palomino beat Ryu Sorimachi by KO at 2:03 in round 7 of 15

Location: Hilton Hotel, Las Vegas, Nevada, USA

WBC Welterweight Title 

 

尾崎富士雄 vs. マーロン・スターリン

1988-2-5 : Marlon Starling beat Fujio Ozaki by UD round 12 of 12

Location : Convention Center, Atlantic City, New Jersey, USA

WBA Welterweight Tiltle

 

尾崎富士雄 vs. マーク・ブリーランド

1989-12-10 : Mark Breland 146¼ lbs beat Fujio Ozaki 146¾ lbs by TKO at 0:34 in round 4 of 12

Location: Korakuen Hall, Tokyo, Japan

Referee: Julio Cesar Alvarado

Judge: Fernando Viso 30-27

Judge: Marco Antonio Rodriguez 30-27

Judge: Uriel Aguilera 30-27

Stopped on cuts 

 

佐々木基樹 vs. ヴァチェスラフ・センチェンコ

2009-10-03 : Vyacheslav Senchenko 147 lbs beat Motoki Sasaki 147 lbs by UD in round 12 of 12

Location: Sport Palace “Druzhba”, Donetsk, Ukraine

Referee: Stanley Christodoulou

Judge: Ignacio Robles 119-107

Judge: Steve Weisfeld 119-107

Judge: Robert Hoyle 119-107  

 

佐々木は尾崎以来20年ぶりのチャレンジだったんだな。

それ以来なしか。

キャッチ画像は尾崎を使いたかったのだけど写真が見つけられず、仕方ないので僕が最も観たい試合(未見の)ロビンソン-ギャビランにした。