久しぶりの映画館での鑑賞。月一とかいいながら足を遠のかせている。理由は単純に足を運んでまで見たい映画がなかったから。金曜の夕方のタイムスケジュールで観客は僕を入れて3人。年配の夫婦とやはり年配の男性。若い子はこういう映画は観ないのでしょうね。きっと。
李相日監督作品を選んだのは「大はずれはないだろう」という予感からです。
前作の『悪人』を映画館で観たときも思ったことなのですが、役者の顔アップを多用するため表情の変化から感情の起伏や吐露感みたいなものを理解させたいんだなと。『許されざる者』も同様で、特にメインキャストの渡辺謙の顔アップが多いこと多いこと。そしてさすがキャラクターに魂を注入するのが上手い役者なので監督の演出に無難に応えているように思います。この顔のアップは映画館のスクリーンで観ることでより効果が出るんですよね。李監督はそのへんを計算して作っているのではないでしょうか。
クリント・イーストウッド作品のオリジナルキャスト以上のインパクトがあったという点で柳楽優弥は良かったと思います。
見栄っ張りで軽薄な若者を上手く演じていて渡辺謙を引き立てているのでサブキャラのお手本と言えます。脇が良いと主役が立ちますからね。
ストーリーはオリジナルをまんまなぞっっていました。明治初期の時代設定と未開拓の蝦夷地というロケーションが西部劇のリメイクという難題をクリアする要因になっています。そして先住民であるアイヌ迫害の歴史が上手く嵌り若干のオリジナリティを出すことにもなっています。アイヌと倭人の混血という柳楽のキャラ設定も良かったのではないでしょうか。
映画好きの人はおそらくイーストウッド作品と比較しながら観てしまい、その結果いろいろダメ出しするのでしょうが、僕はあえてバイアスかけずに観たためでしょうか、それなりに楽しむことができました。
映像クオリティは非常に高いですし、時代考証もしっかりしていますし、テーマ的にも骨太で見応えがあったなというのが素直な感想です。