営業車のMito QVの車検整備を地元の自動車屋ではなく埼玉のショップに依頼した。
車高調の取り付けもあったし、単にイタ車に慣れたメカニックにやってもらいたかった。
まあ今回は別に大袈裟な整備はないだろうし、ただの24ヶ月点検と言ってしまえばそうなのだが、次回の車検ではタイミングベルト交換やらいろいろあるので様子見的な意味合いもある。
ショップの印象(料金も含む)が良ければ2年後にも頼むつもりだ。
ということで埼玉まで車を届けに行ってきた。
片道150kmくらいだから大したことはないが。
実は予約を1ヶ月前に入れていたのだが車検切れギリギリの入庫になってしまった。
代車の空きが出なくて先延ばしになったのだが、タイトスケジュールが嫌いな僕は正直気分が悪かった。
車検が切れる前日に入庫って。
専門ショップの看板出している場合この手のことは許容しなければと納得はしたが、ややネガティブなムードを持って来店したのは確かだ。
ショップに着くと駐車スペースがほとんどないほど車がギッチリ。
ほぼ全部イタ車で、アバルト595が多かったかな。あとはアルファか。
来店前には何時に行きます的な電話は入れなかった。
おそらく忙しいだろうし逆に迷惑だろうと。
僕は若い頃から仕事柄車屋との付き合いが多く、国産外車、小規模大規模問わず様々な人と接してきたので内情をそこそこ知っている。
決して接客が上手でない人がいることもわかっているので細かいことを気にしない方が賢明だ。
店主らしき人が店舗前にいたので、挨拶し、訪問目的を伝え、指示を待った。
思ったより彼の愛想は良かった。
事務所で待つように言われたのでそれに従う。
が、事務所は正直かなり狭く、しかも僕以外にも作業待ちの客が3人居て、所謂密状態。
「マジか?」
外に居たかったがそうもいかないので事務所の椅子におとなしく座った。
やがて担当メカニックが現れたので車検証類を渡し、受付表を記入した。
「名前と住所連絡先を書いてください」
そう言われたので他の記入欄を無視して書いたものを渡すと心外そうな表情。
あら、マズったか?
すると、
「今回車検以外の作業を希望されますか?」
「車高調を付けてください。」
「車高調は何ですか?」
「ビルシュタインです。」
彼の表情が曇る。
「乗り心地はかなり悪くなります。それと車検通りませんので了解してください。」
「どれくらい下げます?」
車検通りませんの一言がめっちゃ引っかかったが、後ろは出来るだけ下げて、逆に前はあまり下げないで欲しいと伝える。
「リア下がりで、フロントが突き上がった斜めの姿勢になりますが、それで良いのですか?」
そんな極端なことにはならないことを知っていたが、一応相手はプロの整備士なので余計なことは言わず、
「じゃあ、お任せで。」
「いや、それじゃ受けられません。後から気に入らないと言われるもんですから。」
もうこの時点でこの人と話すのが嫌になったが、なんとか感情を押し殺して我慢。
最低地上高を確保して平行な姿勢にしてもらいたいと希望を伝えた。
それに対しては無理だとも出来るとも、ご希望に沿うようやってみるなどのリアクションなし。
あ〜早く帰りたい。
もう頭の中にはそれだけ。
油脂類などの交換希望を返答し、終わりかなと思ったら最後に、
「タイミングベルト交換してます?」
整備記録を捲りながら訊かれたので、
「換えてないです。」
僕の返答をまるで聞いていないかのように書類をペラペラ捲っている。
「記録はないですね。換えてないのではないですか?」
だから換えてないって答えただろう。
「次の車検で交換するつもりでした。」
「あ〜、それまでもたないですね。うちでは5〜6万キロまたは6年での交換を推奨してます。」
「でも、3万キロ走行なんで、今回はいいです。」
「走行キロと経年のどちらか早い方という意味です。タイミングベルト切れても文句言わないでくださいね。」
そう言い残して代車を取りに事務所を出て行った。
国産車のそれもディーラーでしか車検整備をしたことがない人だったらビックリするような対応だろう。
が、こんなもん。整備工場は何処も。むかしはね。
法改正があり、ユーザー車検が容認され、コバックなどの比較的安価で簡易なシステム車検プランを練った大規模指定工場などの台頭で昔ながらの町の三ちゃん整備工場(頑固オヤジが店主の)は生き残れなくなってしまった。
整備の腕(経験や専門スキル)はなかなかユーザーにアピールしにくいものだ。
本当に大事なのはそこなのだけど、今時の車は壊れないし職人気質をなんらかのフィルターなしに一般ユーザーに伝えることはとても難しいのだ。
『安くて親切な接客』
一般的にはそれが一番の評価ポイントと思われているのでは?
ところがニッチマーケットのイタ車ユーザーにはそれが当てはまらないところがある。
先ず、多くの整備工場が嫌がるからね。
「専門工具がないから」とか、
「車検後にトラブルが出てクレームされるのが嫌だから」とか、
「イタ車乗っているヤツは偏屈な車好きで小五月蝿そうだから相手にしたくない」
とか色々理由を想像できる。
逆に行き場を失ったユーザーを安易に引き受ける得体の知れないショップは不安だ。
専門性とある程度のネームバリュー(今時はプロモーション手段はいくらでもある)さえあれば勝手にユーザーが寄ってくるのだ。
構図的には昔の伝説の頑固オヤジ整備工場の集客と変わらないことになる。
だから上記の接客態度はある程度は車好きユーザーに容認されてしまう。
だれも文句を言わない。
だから問題意識は持たず同じことを繰り返す。
最終的には整備の腕とお代で評価するしかないのだ。
久しぶりに伝説の頑固メカニックに出会って、その時は気分が悪かったが、後になって頭が冷えたら昔のこと(若い頃に出会った車屋たちの態度)を思い出して郷愁に若干だが浸ってしまった。
今時なかなか居ないからね。
納車されて車を転がして彼の仕事がどうだったかについてはシビアに判断させてもらおう。
イタ車屋さんの評価はその後かな。