
先週末は早川水系のA川上流域に釣行してきた。
下流域の渓相と水質があまりにも悪く、それを幾度となく眺めて知っていたため釣行を見送っていた現場だが、中流域以遠はそれなりの魚影があると知り(登山界隈のソースにより)初釣行した次第。
ただ入渓までのプロセスはかなり面倒く、タイトルの通りほぼ山行と行って良い。

登山者用のバス停から林道を登っていく。
バス停で僕と一緒に登山バスを降りた人が居て、多分釣り師だろう。
僕は寝不足体調不良が影響したか若干バス酔いしたため30分ほどベンチに腰掛けて休んでからスタートした。

30分ほど登ると写真の堰堤が出現。
ここが要所と知っており、巻き方も登山者(沢屋)が公開している。
多少の恐怖感はあったが無事通過。

堰堤の上は延々続くガレ場(河原が広いため)で渓が幾筋かに枝分かれしている。
左岸側に登山道の取り付きがあり、普通はそこから登山道に入る。
この場所で先行者に追いついたため挨拶をして話をした。
お互いの予定ルートを確認し合うと、全くのモロ被りであった。
話し合いの末竿を出すエリアを分けようということになった。
先行者の判断を尊重した形だ。
厳つい面相のフライアングラーは僕の目の前で電子タバコを吸い出し、露骨に嫌そうであった(まさかの競合者出現に失望の色を隠せなかった)
何となく気まずいこともあり僕は予定を一旦変更して別筋の渓を遡行してみることにした。
ガレ場を歩き続け、枝分かれする場所から予定外の渓に入った。
巨岩ゴーロ帯を懸命によじ登りつつ遡行したが、完全にハズレを引いてしまったようで渓相はまだしも水質が酷い。
理由不明だが灰褐色の濁りが入っていて魚っ気ゼロ。
諦めてガレ場に戻り、やはり予定外だった本流筋を遡行することにした。

渓相は常にこんな感じでダイナミックな中流域だった。
本当はこのエリアを登山道利用してショートカットするつもりだったのだ。
「無理!」
300m遡行してそう判断。
一旦ガレ場に戻り取り付きから登山道に入った。
まあまあの急登を登らされ、トラバースエリアを経て上流域にたどり着いた。

途中寄り道したこともあり、バス停を出発してから3時間半でようやくだ。
最短で来ていれば2時間ちょいくらいだろうか。
タックルの準備をして釣り開始といきたかったが先行者との取り決めを思い出し、しばらくは釣りをせずに遡行した。
中流域に比べるとはるかに遡行しやすい。
大体は上写真のような渓相だ。
ゴルジュもないし巨岩が通せんぼすることもほとんどない。
「なるほど釣り師は皆上流域に来るわけだ。」
渓流釣り師は巨岩ゴーロ帯を嫌う説。
先行者のフライアングラーに追いついたので、ここまでの経緯を話した。
すると僕に同情したのか彼の許可が出たため一緒に釣りできることになった。
50m間隔くらいで互いに抜かしつつ遡行するイメージだ。
「魚が居ないよ。人が入ったみたいだな。」
暗い表情で彼がぼやいた。
「フライでは厳しいが、ルアーなら釣れんじゃね。」
判断根拠は不明だがルアーの方が釣りやすいと思っているようだ。
「こういう場所では、流れに乗せるだけで良い毛鉤の方が有利かもしれませんよ。魚を誘う時間を稼げるという意味でね。ルアーはアクションさせるために流速+αで引いてこなければならないのでプレゼンタイムが短いというデメがあるんですよ。」
そう反論すると彼は意外そうな表情をしていた。
期待したほど釣れない(魚が居ない)から同釣を許可したように感じた。
普通は嫌がるからね。
ルックスは厳つい強面だが案外気の良い人なのかもしれない。
その後も時々コミュニケーションを取りつつ一緒に釣りをした。
僕の釣果に一緒に喜んでくれたり本当に良い人のようだ。
顔は阿部譲治だが。
街中で見かけたら反社の人にしか見えないだろう。

彼のネガティブな話とは裏腹に魚影はまあまあ濃かった。
ただ食いっ気がイマイチ。
活性が低いのか多少スレているのか。
標高1500m~1800mの山奥だから人が来ないとは言えない。
渓魚釣り師は魚が居ればどこにでも出没するのだ。
現にこの日2人のアングラーが魚を漁っている。
激戦区というわけではなさそうだが。

ニッコウイワナが主だが、ヤマトとのハイブリットっぽい個体も確認できる。
サイズは8寸アベレージで、時々9寸が混じる。

フライの阿部譲治氏(笑)もぼちぼち釣れ始め、表情が柔らかくなった。
「上に行くにつれて魚が多くなったね。」
と厳つい顔を綻ばせる。
「いや、最初から魚は居ましたよ。」
とは言えなかった。
多分彼なりの謙遜の仕方だったのだろう、ハードルを下げて格好をつけるためのね。
僕の釣った9寸を見て、
「おおっ!でかいな。尺あるな。」
と無邪気に驚いてくれる。
やっぱ良い人だ。

イワナらしく体色の変化が著しかった。
そういう意味ではニッコウは釣り師を楽しませてくれる。
正直釣り味は大雑把というか簡単というか(アマゴと比べてね)夢中になれないのだが、そういうネガがだんだん気にならなくなってきた。
食った後闇雲に走るからフッキングがむこう合わせでオートマチックに決まり、バレにくいからキャッチ率はアマゴに比べて高い。
勢い雑にランディングしがちだが。

大釜の出現率も高く誰でも分かりやすくて釣りやすい現場だ。
渓を遡行するのはそれなりの労力を要するが、両岸が登山道のように歩きやすくなっているためチェック不要のエリアを端折る際に都合が良かった。
退渓はできないので帰りはピストンになるが、渡渉しつつ代わる代わる両岸の山道(登山道ではなく獣道)を歩けるから時短が多少図れる。
実際帰りは2時間程度でバス停まで戻れた。

この日も菅スプーンのみ使った。
どんな現場でも使える汎用性を身に付けるために使い続けている。
カラーは、真鍮とブラックレインボーを使い分けた。
ピーカンで上が開けていたためか、ややブラックレインボーの方が反応が良いように感じた。

どのポイントにも魚は居たが、直ぐに食ってこない。
ダメかなと思って止める間際に食ってくることが多かった。
普通は3投以内(大体1投目)に食ってくるが、10投してやっとみたいな。
何か変な感じだったな。

一つのポイントに複数のイワナが居たら、争うようにルアーに飛びついてくるイメージがあったが、まるで互いに牽制し合うように様子見をしている。
追ってきてもなかなか食ってこない。
悲しい思い出がある個体が多いのかも。
活性の問題とは考えにくかった。

あるいは現場と菅スプーンのマッチングがイマイチだったのか?
バギースピナーだったらもっと楽に食わせていただろう。
阿部譲治氏(笑)も、
「なんでミノー使わないの?」
スプーンのみで釣りをする僕に奇異の目を向けていたようだ。
フライアングラーにミノーとスプーンの違いを説明するのが面倒いので、
「スプーンでもちゃんと釣れているでしょ。釣れているルアーを変える必要はないですよ。」
とだけ答えた。

上に行くに連れて渓相がゴーロ帯に変わっていった。
ただ釜はあるのでポイント探しに困ることはなかった。
移動も岸を使えば問題なし。
全体的に遡行しやすい現場だと思う。

こういう体色が一番好き。
背の黒さと腹の黄とオレンジと赤のコントラストが際立つ。
体色の個体差(バリエーション)はイワナの魅力だと思う。
大味でテクニカルなスキル不要のターゲットだが、少しだけ好きになりつつある。
以前は、バカ魚のレッテルを貼っていたのだけど、それはそれで分かりやすい(釣りやすい)魚のイメージに脳内変換されつつあるのかも。
最近イワナ釣りを少し楽しめるようになったのはターゲットの魅力に気付いたからだろう。

泣尺だがこの日の最大魚。
尺が出ないということは、やはり人が直近で入ったということなのだろう。

イワナはアマゴほどフック傷で出血しないイメージがあるが、掛かり所によっては出血するようだ。
かえしの有る無しではないと思う。
イワナはバーブレスでもキャッチ率は変わらず高い。
食った後グイグイ走って勝手に…

この子はパッと見尺上だが、胴回りが太くて立派な型のためそう見えるだけで実際は泣尺だった。(重量は十二分に尺上級)
同様のサイズがこの日3匹。
結局尺上は出なかった。
まあ同釣者(先行者)が居たからね。
贅沢は言えません。

カウンターを持ってこなかったので正確さに欠けるが、釣果は25匹前後だった。
寄り道せずに入渓していれば、そして先行者が居なければ、倍は出ただろう。
その程度の魚影はありました。

この子が最後の釣果だった。
明らかなニッコウ種だが、ヤマトと見紛う個体も居た。
原種はおそらくヤマトで、後から放流されて増え続けたのがニッコウなのだろう。
元からニッコウということはないだろうからね。
そして交配が進みハイブリットがポツポツ出現することになったのではないか。
まあヤマトだけだったらこんなに釣れないような気もするし、アングラーマインド的に落とし所を決めかねる現状ではある。

阿部譲治氏(笑)は13時半で業務終了し下山して行った。
僕もその時間で釣りを止めたが、ランチしてから下山したので駐車場に戻った時は19時を過ぎていた。
そう帰りはバスを利用しなかった。
だから下山に4時間半。
5時に駐車場を出発して戻ってきたのが19時だから行動時間は14時間。
釣りをしていたのは4時間だけ。
ほぼ山行ということで。