連敗記録

 

『ネガポジアングラー』という秋アニメの最終話の放送配信が終わった。

僕はPrime Videoで全12話視聴した。

np-angler.com

ストーリーは、まあどうでも良い。

ただ一点、主人公が釣りを始める状況というか、切っ掛けが僕とちょっと似ていてシンパシーを持ったから取り上げた。

僕はいい大人になってから釣りを始めた。

社会人になり会社勤めを始めて数年経ってからだ。

その後30年以上釣りが一番の趣味になった。

子供の頃から自然に親しんでいたわけではない。

むしろアウトドアに全く興味がなく、スポーツは好きだったので精々スノボなどのウィンタースポーツをやっていた程度。

若い頃の興味の対象は女の子や車だけだったのである。

ある日仕事中に(上司と得意先まわり中に)

「あっ!〇〇くん、向かいのあの釣具屋に入って。」

と急に言われ、訳もわからず釣具屋の駐車場に車を停めた。

「実はバス釣りを始めたいのだけど、君も一緒にどうだ。」

「釣り?全く興味ないです。やったことないですし。」

「そう言わずに付き合え。面白いかもしれないぞ。」

「いやー、やりたくないです。巻き込まないでください。」

「来週の土曜日は予定あるか?試しにやってみて面白くなかったらそれっきりでやめれば良いし。なっ!試しに1回やってみよ。付き合え!上司命令だ。」

今時なら完全にパワハラでアウトな上司部下の会話をした覚えがある。

そして上司と一緒に釣具屋に入り、気付けばバス釣りのタックル一式(初心者セット)を買っていた。

ルアーは形が面白いという理由だけでクランクベイト4個セットを買った。

そして翌週末、八郎潟に上司とバス釣りに行く羽目になったのでした。

ちょうどバス釣りブームの頃だったかな。

早朝に上司宅に迎えに行き、その後車を走らせること3時間で現場に着いた。

二人ともバス釣りの知識はほぼゼロ。

僕に関しては釣りの知識すら皆無だった。

上司はビデオで多少お勉強していたようだがまともにキャストすらできてなかった。

彼は2千円のミノーを葦に打ち込んでロストし不貞腐れてやる気を失う始末。

昼過ぎからは車で不貞寝していた。

「何しに来たんだか。」

僕は呆れつつも釣具に投資した分はなんとか回収しようとキャストを続けた。

で、人気のないワンドでクランクベイトを投げまくっていたら、釣れた。

それも三匹立て続けに。

初めて見るバスはなんだかグロテスクに見えて気持ち悪くて持てなかったので直ぐにリリースした。

そして車に戻り、上司に報告(笑

「釣れました。ブラックバス。それも三匹。」

「オイオイ、嘘つくなよ。じゃあなんでここに持ってこない?現物見ずに信じれるか。」

もう夕方で日が落ちかかっていたし、帰り道も長い。

「じゃあ来週もう一度来て証明してくれよ。」

「わかりました。」

もしこの時バスを上司に見せていたら、僕はその後釣りを止めていた可能性が高い。

当時はスマホどころか携帯電話すらなかったから写真撮りようがなかったこともある。

約束通り1回お付き合いをしたのでもう十分でしょと。

そして翌週も八郎潟へ。

その翌週もまた。

で、沼にハマってしまった。八郎潟だけに。

そして毎週のように一人でバス釣りに行く僕に件の上司がある日別のお誘いをしてきた。

「〇〇くん、バスなんか止めてシーバスやらないか?」

「シーバスって何ですか?」

「スズキのことだよ。〇〇川の河口で簡単に釣れるらしいから一緒にどうだ。」

「タックルまた揃えるの大変なんですけど。」

「ロッド2本持っているから貸してやるよ。リールだけ自分で買ってくれ。」

結局リールだけでなくロッドも買った。

上司に借りるのは気が引けたので。

ルアーも高額な単価に驚きながら3、4個揃えた。

ブルーオーシャンとかショアラインシャイナーだったな。

そして上司と一緒にスズキ釣りを始めたのだが。

全く釣れなかった。

潮汐とか時合とか全く意識せずにやっていたからね。

教えてくれる人も居なかったし、ネットもない時代。

白紙状態でスタートしてガイドラインも無しで釣れるほどスズキ釣りは甘くなかった。

バス釣りとは勝手が違い過ぎた。

軟弱な上司は直ぐに心折れて止めてしまった。例の如くだ。

全く釣れないから全然面白くなかったけど、僕は意地になって続けた。

一匹釣ったら止めようと。

釣れる気配すらなかったけどね。

結局13連敗。

その間ノーバイトだった。

全て土曜の夕まずめから日曜の朝まずめまでの徹夜釣行だった。

キャストしまくって回遊を待つ。そんな感じだった。

タチが悪いことに他のアングラーが釣っている様すら見ていなかった。

つまりスズキの所在を全く掴めない釣りを3カ月もやったのである。

釣れる気は全くしなかった。

だからどうやったら釣れるのか、どんな状況なら釣れるのか、皆目見当付かずだった。

取引先にスズキ釣りを昔やっていたという人がいたので、世間話ついでに訊いてみた。

「実はスズキ釣り始めたんですけど、全く釣れません。どこに行けば釣れますかね?」

僕が人にポイントを単刀直入に訊ねたのは、この時が最初であり最後だ。

それくらい袋小路状態で出口(答)が見えなかった。

秋田市内にね、秋田運河ってあるから。旧雄物川だね。あそこは魚影が濃いから君でも釣れるんじゃないか。」

そしてその週末に早速行って釣れましたとさ。

14回目の釣行でね。

この13連敗というのが僕の連敗記録だった。

が、今秋それを更新してしまった。

それくらい釣れなかった。

だってアユが落ちてこないのだもの。

8月の台風の影響もあったろう。

ハイシーズンにこれほどアユが居ないホームリバーは初めてである。

アユの居ない現場で魚を拾うのは極めて難しい。

 

 

この場所では毎年アユの流下を多く確認できるのだが、今秋は皆無だった。

 

 

アユが居なくてもスズキが全く居ないわけではない。

たまーに食ってくれるのでそいつを確実に拾えるかどうかの勝負である。

 


デフォルト縛りとかカッコつけていたが、それどころではなかった。

ハイシーズンなのに食い気のない個体に口使わすためにカスタムプラグを使うしかなかった。

K2F142改とか。

 

 

1本、良型を取り逃したのだが、トルクの太い流れにモロに乗って降っていくものだからライン出されて為す術なしだった。

絶対獲ると粘ったのだが、最後は岸際のブッシュに潜られてバレた。

足場が悪く水量もあったため動きが取れなかったのだ。

アングラー不利のロケーションで流れに乗って魚に走られるとコントロール不能になることがある。

流れてくる8~10kg、1m前後の丸太にルアーを流芯の中で引っ掛けてしまったら回収がどれほど困難か想像すればわかるだろう。

+死に物狂いの魚の泳力が加わるのだ。

スズキ程度の引きで大げさなことを言うなというのなら、その人は河の中流域でのスズキ釣りをよく知らないのだろう。

このバラしを後々まで引き摺ってしまった。

つまりずっと後悔し続けた。

スズキ釣りにバラしは付き物だし、普通なら大して気に留めずにいれるのだが、なんだかダメだった。

悪いシーズンってこういうものである。

今秋のスズキ釣りはそんな感じでした。