ショートレビュー ベタビエフ-スミス

 

Saturday 18, June 2022

Madison Square Garden Theater, New York, New York, USA

Commission New York State Athletic Commission

Promoter Joe DeGuardia, Bob Arum

Matchmaker Brad Goodman

Inspector Matthew Delaglio 


マッチアップ:★★★

スリル:★★★

スキル:★★★

印象度:★★★

 

現地実況はベタビエフと発音していたのでそれに倣うことにする。

さて、直近で印象的な試合をしたファイターたち、ゴロフキン、井上、そして今回のベタビエフに共通した長所がある。

それは足捌き(フットワーク)が秀逸という点だ。

フットワークといっても、派手にサークリングするのではなく前後左右のショートディスタンスの動き方が絶妙なのだ。

必要最低限度の動き幅であることがポイントだ。

付け加えるのなら、井上にはステップイン時に鋭さを感じ、

ゴロフキンには距離のアジャストの妙を感じ、

ベタビエフには脱力することによるスムーズさを感じる。

これらは全てオフェンスに直結する要素である。

基本的にフットワークはディフェンススキルであり、ブロッキングやボディワークと同列である。

これら3つをどう組み合わせるかでファイターのディフェンスルーティンが決定する。

カネロのように強固なブロッキング主体(昔はボディワークを組み合わせていたが)

ホセ・ナポレスのようにボディワーク(ヘッドスリップ)主体と極端なディフェンスルーティンのファイターも存在するけどね。

優れたファイターは大体複合的にディフェンス要素を組み合わせて攻防の連動性を生むようスキルを持ち合わせているものだ。

例えブロッキング主体であってもリアクションの速さでオフェンスへの切替タイミングの短縮化を図れるファイターもいる。

例えばアレクシス・アルゲリョとかファン・マヌエル・マルケスとか。

二人とも攻防分離している印象がないよね。カネロのような。

ブロッキングしながら手も出ている。そんな感じ。

厳密には微妙に上体の角度を変えたりポジションの最適化をナチュラルにはかることで連動性を生んでいるとも言える。

瞬時に複雑で多くの動作を連続する(複合する)ことで相対的に単純動作の相手にアドバンテージを得て攻略の緒を探っている。

ベタビエフにとって相対的に単純動作のスミスはイージーな相手だったようだ。

スミスは体格とフィジカルでアドバンテージがあったが、ボクシングがちと単純過ぎる。

バランスも悪い。

柔軟なベタビエフに強引すぎるプレスをかけてペースを取ろうとしたが、まったくはまっていなかった。

スミスがあれだけ隙を晒せばベタビエフにカウンターを合わされてしまう。

最初のダウンは布石があったにもかかわらずスミスに警戒する頭がないのか自分を守ることを忘れたままゴリゴリやってしまったが故だ。

そこをベタビエフに見定められてタイミングとアングルを測られてしまった。

「初回だしもっと慎重にやればいいのに」

は結果論ではない。

井上は初回にダウンを奪って大きなアドバンテージを得てはいても次のラウンドの序盤にドネアの左フックのカウンターを警戒することを怠っていなかった。

自分優位になればなるほどクールに状況判断できることは倒し屋に共通した資質だ。

ベタベエフにもその資質があるように思う。