出版社の辞書編集部を舞台に、新しい辞書づくりに取り組む人々の姿を描き、2012年本屋大賞で第1位を獲得した三浦しをんの同名小説を映画化。玄武書房の営業部に勤める馬締光也は、独特の視点で言葉を捉える能力を買われ、新しい辞書「大渡海(だいとかい)」を編纂する辞書編集部に迎えられる。個性的な編集部の面々に囲まれ、辞書づくりに没頭する馬締は、ある日、林香具矢という女性に出会い、心ひかれる。言葉を扱う仕事をしながらも、香具矢に気持ちを伝える言葉が見つからない馬締だったが……。馬締役で松田龍平、香具矢役で宮崎あおいが出演。監督は「川の底からこんにちは」「ハラがコレなんで」の俊英・石井裕也。
月一映画デーなどといいながら3ヶ月以上映画館に行ってなかった。
まあ観たい映画がなかったこととチャリンコを組むのに夢中になっていたからなんですけど。
久しぶりに映画館に足を運んで鑑賞した作品が『舟を編む』
三浦しをんの同名小説が原作、松田龍平主演、石井裕也監督のコンビで撮ったもの。
個人的に松田龍平の演技を最近気に入っているのとオリジナルストーリー以外での初監督?をした石井裕也監督の仕事ぶりに関心があってチョイスしました。
金曜の夕方のタイムスジュールで観たのですが、観客は僕を含めて5人。内2人はカップルで多分デート、他はいかにも映画好きという印象の40代くらいかな。
座席はいっぱい空いてましたが何故かカップルは僕の真後ろの席に。おしゃべりとポップコーンのにおいが気になる。
映画がつまらなくてカップルのおしゃべりが止まらないようなら途中で席を立とうと思ってましたがその心配は杞憂に終わりました。
2人とも無言でお菓子も食べずに観ていたのでストーリーに入り込んでいたようです。
僕はどうだったかというと、まあ、楽しめたと思います。
出版社(おそらく大手)のお荷物部署というか島流し部署というか要はラインから外れた感じの辞書編集室が舞台。
15年もの歳月をかけて辞書を作る人達の奮闘振りをコミカルに描いています。
目一杯キャラを作りこんだ主人公(松田龍平)の成長ストーリーでもあります。
一風変わった恋愛ストーリー(お相手は宮崎あおい)も挟んであって、全体的に地味な展開ですが飽きずに観れました。
気の遠くなる膨大な作業を強いる辞書の編集シーンを全編に亘って見せているため「大変なことやっている感」を観客は刷り込まれます。
そのため紆余曲折困難を乗り越えて辞書が完成することがちゃんとドラマになるんですね。
自分の気持ちを他人に伝えるのが苦手な主人公が「言葉」を解説する辞書編集に携わっているというのがこの作品の面白さのベースなのかな。
発する言葉は「あー」とか「うー」とかばっかりで明確に単語を繋げた意思表示をほとんどしないというかできない主人公は当然のごとく一目惚れの女性とまともなコミュニケーションが取れません。
板前修業中の宮崎の作る料理の味見係りをするだけではいかんと一念発起しラブレターを渡す件は結構笑えます。
宮崎あおいの見せ場はベランダでの猫を抱いた初登場シーンと下宿の台所で包丁を研ぐ後姿のシーンですが、正直もうちょいインパクトがあると松田の片思いにシンパシーが持ててストーリーに入り込めるんですけどね。
悪くはないですが。
一方でこっちのカップル(馬締の同僚役オダギリジョーと池脇千鶴)はぎこちなさのまったくない、かといってラブラブでもない、便利女でもセフレでもない、それでいてリアリティはある、そんな描き方で馬締と香具矢(宮崎)の関係と対比させて観れます。
池脇の演技は秀逸でこの作品で一番印象に残ったかも。
ギリ鬱陶し過ぎず、打たれ強い感じと女独特な図々しさを上手く出していて良かったですね。