マンチェスター・バイ・ザ・シー

 

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マンチェスター・バイ・ザ・シー』を映画館で鑑賞した。

平日の夕方の回で観客は10人くらい。

上映最終日だったためか思っていたより客は居た。 

 タイトルのそれは地名でありアメリカ東海岸ボストン近郊の田舎町なのだが、主人公がある事件を期に逃避して住んでいるボストンと故郷とのこの微妙な距離を確認したくて地図を貼った。

「車で1時間30分程度で行ける距離」

それを遠いと感じる甥っ子(主人公の死んだ兄の子で遺言により後見人をさせられる)と大して遠くないと思っている主人公の対比により故郷への思いがわかる。

心臓の病気により余命の少なさをわかっていた兄は生前几帳面な遺言を弁護士に託しているのだが、それは悲惨な事件により町を去った弟にもう一度戻ってくるエクキューズを与えていたのだ。

ボストンでの主人公はアパートのメンテナンスをしている便利屋。

腕は良いが愛想が極端に悪くアパートの住人に好かれているわけではない。

友達もなく、そこに住む理油は希薄だ。

ところが故郷には帰れない。

40歳くらいにして逃避するだけの人生。

 人望のない主人公と甥っ子の関係が中心に話が進むのだが、過去の悲惨な事故がフラッシュバックのような形でランダムに差し込まれ、主人公の現状を肯定していく。

キャッチの写真は主人公と元妻が街角でばったり出会う場面で、多分ドラマ的にはクライマックス。

元妻役のミシェル・ウィリアムズの感情を激しく吐露する演技が素晴らしい。

ケーシー・アフレックのリアクションも良い。

「ちょっとだけ気が晴れた」と彼が声をしぼりだした時、

観客のシンパシーがピークになる。

それまでの淡々とした流れを一変させる演出も見事だ。

ということで2時間超とそれなりに長尺で暗い話だがカタルシスはある。

ある程度人生経験を積んだ人が観れば納得できる脚本だし自然とストーリーに入り込めるのではないか。

泣ける作品ではないけどね。

冬のボストン近郊の港町の寒々としたロケーションが良い味を出している。

東海岸の寒々とした景色が印象的な点で『エターナル・サンシャイン』をちょっと連想した。