セルヒオ・マルティネス vs フリオ・セサール・チャベスJr

<WBCミドル級タイトルマッチ セルヒオ・マルティネス vs フリオ・セサール・チャベスJr/米国ラスベガス>

12R残り1分40秒まで、セルヒオ・マルティネスはいつもの通りのゲームプランに沿って大柄でスピードのないメキシカンに実力の違いを見せ付ける格好で完勝するはずでした。
ところがそのまま足を使って、場合によってはクリンチすることで時間をつぶしてしまえばいいものを、最後の力を振り絞って向かってくるチャベスJrをまともに相手してしまいました。
チャベスJr渾身の右フックを喰って、自分がなすべきことを思い出したでしょうがついでに効いてしまった。


残りのガソリンを全て使い切るかのような左フックを追撃されダウン。
なんとか立ち上がりましたがダメージは深く、あと一発クリーンヒットを貰えば終わっていたでしょう。
チャベスJrにとっては千載一遇のKOチャンスでしたがそれまでのダメージと疲労でもう体が動きませんでした。
試合後のインタビューでマルチネスは、「12Rのダウンは自分のミス」と言ってましたが、要は中途半端だったということです。

チャベスJrの戦略ミスなのかそれともマルティネスの変幻自在のフットワークとスピーディーなジャブに翻弄されて手が出なかったのか、最後の最後に見せ場はあったものの、残念な出来だったかなと。
37歳のマルティネスは確かに素晴らしいのですが、この先何年もボクシング界を引っ張っていくタレントではありません。
この試合はチャベスJrのために組まれた試合であり、超難敵マルティネスの壁を乗り越えることを多くのファンが期待していたと思います。
スキルの差はパワーのアドバンテージである程度埋めることができます。
ただスピードの差を埋める代替アイテムはありません。
チャベスのオフェンスのリズムはマルティネスに比べてあまりにも遅く、それをパワーの差で補うことは出来ません。
12Rはマルティネスのスピードが落ちたので捕まえることが出来ただけです。
ミドル級あたりの世界のトップレベルは皆スピードがあるのが当たり前。
勘が良くてスピードのある相手には今のチャベスJrのボクシングでは勝ちきれないと思います。
今回の敗戦でも商品価値を失わずまた再起後はオンザレールになるのでしょうが、パワー偏重のスタイルから軌道修正してくれれば良いのですけどね。
せっかく恵まれた上背があるのですからそれを生かすボクシングにも目を向けて欲しいと思っているファンは多いと思いますよ。
ジャブの効果をマルティネスに身をもって教えてもらったのですから。