ムエタイ出身で3戦目に世界タイトルを獲得した記録を持つセンサク・ムアンスリンを取り上げます。
タイ人繋がりで。
国際式デビュー戦で当時世界ランキング6位のルディ・バロ(比国)を1ラウンドKO。
2戦目にタフで鳴るライオン古山にもKO勝ち。
ちなみにこれは古山のキャリア唯一のKO負け。
彼は全盛期のアントニオ・セルバンテスにも倒されてません。
そして次戦ペリコ・フェルナンデスに勝ってWBC世界ジュニアウェルター級タイトル獲得した時デビューから1年経っていなかったのですから驚異的。
まあこのとんでもないスピード出世記録も来月オーランド・サリドに挑戦するワシル・ロマチェンコに塗り替えられるでしょうけどね。
別に出世の早さでセンサクを取り上げたわけではなく、
彼のパンチングパワーにフォーカスしたいのです。
容姿を見てすぐ解りますが、上半身の横幅が凄い、手が長い。
身長は高くありませんが、リーチは多分190cm近いのでは。
手長猿ですわ。
センサクはこの身体的特徴とムエタイで鍛えまくった体幹とバランス感覚を利して
パンチングパワーを生み出していたのではと分析します。
スピードはないんですよ。ただパンチの伸びがすごい。
サウスポーで半身に構え、強靭な体幹をグルンとダイナミックに回転させて
左ストレートを打ち抜き、
右フックを振り抜きますからパワフルでないわけがない。
それとムエタイ出身者の特徴である『思い切りの良さ』
ムエタイは手足で攻撃しますから相対的にボクシングより手数が多く、
加撃のタイミングもランダムで読みにくい。
ムエタイ競技を子供の頃からやっていることで相手の手数に慣れ、
同時に恐怖心を克服しているためでしょうか、
良い意味で恐れずに思い切りよく手数を出していけるようになっているんです。
国際式の試合ではそのへんがピンとこないというか解りにくいのですが、
ムエタイの試合を見るとイメージが湧きます。
ということでセンサクのムエタイの試合の動画を貼っておきます。
これを観ると気付くことがあると思いますよ。
足が飛んでくるのって怖いですよね。パンチよりも。
まあボクシングよりもムエタイの方が競技者レベルが高いという意味ではないので誤解なきよう。
ライオン古山との初戦の動画を探しましたが見つかりませんでした。
当時、日本のマスメディアはセンサクのような型のない破天荒ボクシングを認めない傾向があり彼の強打を評価する論評はほとんどなかったように記憶してます。
今、センサクの試合を観直すと彼のストロングポイントはやはりハードヒッターだということに気付きます。
それと手の長さ故なのでしょうが、ロングレンジでの攻防を意図したファイトスタイルでした。
前足の置き方、スタンスに特徴があり、ジャブで突き放し、長い左を伸ばし、
徹底的に距離を取って戦います。
ハーンズにはあっさり倒されましたが、得意な距離がほぼ同じですもの。
いかにロングレンジが好きかわかりますよね。
距離が詰まると右フックを引っ掛けるのですが、
このパンチが強いので接近戦への牽制になっています。
インファイトはあまり得意では無いのでしょうね。
ちょっと身体が硬くてボディワークもないですし。
センサクは2009年、57歳で病死しています。