ショートレビュー クロフォード-ポーター

 

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Saturday 20, November 2021

Mandalay Bay Resort & Casino, Las Vegas, Nevada, USA

Commission Nevada Athletic Commission

Promoter Bob Arum, Tom Brown

Matchmaker Brad Goodman 

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マッチアップ:★★★
スリル:★★★
スキル:★★★

印象度:★★★

 

試合後、ポーターは引退をパブリックに表明した。

彼のラストファイトということでポーター中心に書くことにする。

BoxRec: Shawn Porter

公称サイズは170cmだが多分もうちょっと小さい。

168cmくらいか。

ただ体の厚みと幅のあるがっしり体型で水増し感(体脂肪率過多)はなく、そこそこのラッシングパワーがあるためかサイズ不足を感じることはほとんどなかったように思う。

短身で決してスタイリッシュではないためいかアマチュアでの300戦近いキャリアの土台がある割にテクニカル(スキルフル)な印象を持たれていない。

キャリアを通してね。

野暮ったいスタイル(そう見えてしまう)なのはウェルターウェイトとしては小柄な体型を鑑みての選択故か。

ただ本当の意味で野暮ったいファイターではなく、相手が嫌がることをしようとしているために結果的にそういう絵面になるだけだと思う。

実はハイレベルなスキルを持ち合わせているのだが、見栄えをあまり気にせず外連味がないという感じだろう。

勝つためにはどうするか。

それを彼なりに突き詰めて構築したスタイル。

まあ合理性の塊みたいなもんだ。

だから誰とやっても圧倒されたり地力の差を見せつけられることはなかった。

大概の相手には勝てた。

キャリア4敗の相手は、

ケル・ブルック、キース・サーマン、エロール・スペンス、そしてクロフォード。

トップレベルには勝てなかったとも言えるか。

彼自身もトップレベルなんだけど、トップオブトップになるには何かが足りない。

それを一番感じているのは彼自身であろう。

「俺はよくやった。このクラスの強い奴とは全部やった。でも…」

己を知っているが故のあのスタイルだ。

負けた相手との差も冷静に分析できているはず。

それでもたとえ体格やパワーで負けても戦術勝負なら負けない自信があっただろう。

ところがクロフォードには勝負所でのチェスゲームで上回られてしまった。

記憶違いならゴメンだが、7Rに軌道の大きな右を連続で当ててクロフォードを怯ませたシーンがあった。

何かを掴んだ感があり、ポーターはペースをたぐり寄せたと実感しただろう。

それまでディフェンスにいつも以上に気を配り、上体を振りながらジャブを突き(ポーターはジャブの名手)ミドルレンジでのリスクマネジメントを優先しながら割と慎重なスタンスで対峙していたのだが、「行ける。勝負所!」と踏んだのかプレッシャーを強めだした。

で、被弾した。

要はクロフォードに引き込まれちゃった。

彼にとっておいしい距離にね。

下がりながら強いパンチを打てるのがクロフォードの強みだ。

つまり相手がオフェンシブに前に出てこないとその強みが生かせない。

序盤〜中盤とポーターがいつも以上に慎重に上手く戦っていたためスイッチングサウスポースタイルのクロフォードの強みがやや消されていた。

あえてポーターに打たせたとは思わないが、自分の距離に引き込むタイミングを計っていた中での切欠にはなったのではないか。

失点を逆に利用して倍返ししたのだ。

2度目のダウンをした時、ポーターがマットをグローブで叩きながら悔しがったシーンが印象的だった。

「俺としたことがやっちまった。奴の罠にみすみすはまるとは。」

僕にはダウン後のポーターの心情がそんな感じに映った。

トレーナーの親父さんも同様だったのだろう。

肉体のダメージよりも精神的なダメージを受けた息子に挽回する術をないと判断してタオル投げたのだろう。

潔くて妥当な判断だと思う。

ダウンを奪われるまではクロスファイトだったのはいかにもポーターらしいけどね。

お疲れ様。

こいつ良いトレーナーになりそうだな。