無冠の帝王

 

昨日マービン・ハグラーの訃報がパートナーからアナウンスされました。

享年66歳。

子供の頃のボクシングアイコンの一人で試合はリアルタイムではないけど民放で放送していたので普通に観れていた。

中量級ではレナード、ハグラー、ハーンズ、カリーくらいだった。

試合を放送してくれたのは。

テレ東でジョー小泉が解説していたんだ。

辛口の彼がほとんどダメ出ししない数少ないファイターの一人がハグラーだった。

欠点が少なかったからね。

意外と背が低くて175〜177cm程度。

ハーンズと並んだ時にイメージ以上に二人の身長差があって驚いた記憶がある。

リングマガジンのカバーだったかな。

 

 

 

ゴロフキンと並ぶとこんな感じだから。

意外と小さいのがわかる。
ハグラーのことは何度もネタにしたので特に今書きたいことはない。

だから無冠の帝王称号を受けていたことについて。

メジャータイトルホルダーが乱立している昨今、『無冠の帝王』って完全に死語になってボクシングを語る中でまったく使われないワードだ。

まあ実力的に傑出しているので結局タイトルを取るからキャリアの一時期のみそう呼ばれたという分かりにくさや矛盾があることも。

ポジティブな意味合いとしては、ベルト巻くまで遠回りさせられた(能力的なピークが必ずしもキャリアハイライトのタイミングではない)ファイターへの賛辞的なね。

やや皮肉な意味も込められていて(マネジメントの稚拙さとか華に欠けて不人気)必ずしもリスペクトの意味だけではなく、案外複雑なニュアンスなんだ。

強すぎてタイトルホルダーに敬遠されるというのは、

「お前とやってもリスクが高いだけで金にならないんだよ。」

そういうことだ。

ハグラーもナポレスもマルケスもキャラ的な共通点がある。

ビーフェイスかヒールかで区分できずマーケットの中で立ち位置が微妙な玄人受けタイプ。

スピードスターとかハードヒッターとかでは単純に括れない技巧を売りにしていて、ライトなファンには何が凄いのかわかりにくい。

だから商品価値が以外に低いのだ。

レナードとかデラホーヤとは違うでしょ。

アリもそうだけどこれ以上ないという付加価値(オリンピックゴールドメダリスト)付でデビューしたエリートではなく、叩き上げの実力派みたいな。

なんだか故人に対してネガティブなことを書いている気がしてきたのでこの辺で止めておく。

蛇足だが、ボクシングファン歴40年超の僕がリアルタイム観戦できたミドルウェイトとしてはハグラーがナンバーワンだろう。

単純に一番強かったと思う。

勿論ゴロフキンよりもね。 

 

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ハグラーのキャリアハイライトはやはりハーンズ戦だろう。

本当の意味でのビッグマッチだった。

前戦でデュランを一蹴したハーンズにやや分があるとみられていたが、勇気を持って距離を詰めたハグラーの戦略が当たり乱戦に持ち込んでハーンズの強みを消し去った。

初回の攻防が全てかな。

フルスロットルでハーンズを追って行けたのは、自分の耐久力に自信があったからだろう。

ハーンズの強烈な右を直撃されて一瞬上体が揺れるシーンがあったが構わず前に出ていけたのは本当に凄いと思う。

肉体の頑丈さもあるだろうがメンタルも鋼だった。

パンチに耐える力というのもファイターにとって重要なんだなと気づかせてくれたシーンでとても印象深い。

因みにハグラーは本来フットワークを多用するボクサータイプで慎重に試合を運ぶのが常だった。

それが悪い方向に出てしまったのがラストファイトのレナード戦。

レナードを舐めていたわけではないだろうが序盤やや受けに回ってペースを取られてしまった。

12回戦ということもハグラーにとっては不利に働いた。

プライドの高いハグラーは判定に納得がいかずそのまま引退。

キャリアの幕引きは実に呆気なかった。