Saturday 7, May 2022
T-Mobile Arena, Las Vegas, Nevada, USA
commission Nevada Athletic Commission
promoter Eddie Hearn matchmaker Kevin Rooney Jr
media DAZN
マッチアップ:★★★
スリル:★★スキル:★★★
印象度:★★★
先ずはビボルを讃えましょ。
体格差があることを前提にして、(カネロは所詮Jrミドルウェイト上がり)
「こうすればカネロに勝てる。」
という最適解を見せてくれた。
まあカネロもトップレベルで注目度の高い試合を長く続けてきたからいろいろと晒していて分析攻略されるのも時間の問題だったとも言える。
ガードを固めてプレスを掛けて右フックと右アッパーをねじ込むだけの単調なオフェンスがストロングであり続けたのは亀ガードが絶対的な保険になっていて、
相手のパンチを跳ね返し続けることができたから。
近年の攻防分離スタイルには、スタミナ不足と体格の不利をカモフラージュする意図もあったように想像している。
小さなフレームに筋肉を過剰に乗せた体づくりをした結果、上のクラスのナチュラルボディのファイターを圧倒するパワーを身につけ、体格の不利を露呈しやすいお互いの体同士が交錯する状態を徹底して避ける戦術(戦略かな)としての重戦車スタイル。
ジリジリとプレスをかけてガードの上を叩かせ、距離を詰めて右の強打を単発で打ち込む。
ノーコンビネーション、ノーカウンター。
だから短身のファイターのくせに左フックをほとんど打たないでしょ。
コンビネーションオフェンスには左フックが必ず混ざるからね。
「カネロには左フックがない。」
「ついでにカウンターを合わせてこない。」
ビボル陣営は分かっていたのだろう。
左フックを振らないファイターは、逆に左フックのディフェンスを忘れているので距離さえ合えば当てやすいのではないか。
ディフェンス巧者のカネロであってもね。
ビボルは距離のマネジメントが巧みだったので左フックを有効にカネロに当てていた。
あれ、もっと狙い撃ち的にタイミングを合わされて思い切り振られていたらカネロと言えど倒されていたかもしれない。
若い頃のカネロは決して攻防分離型したスタイルのファイターではなく、巧みなボディワークを織り交ぜた複合ディフェンスを披露していたしオフェンスとの連動性もあったのだが、ちょっと壁にぶつかり試行錯誤した結果の重戦車スタイル。
相手をジリジリ追い詰めるからスピード要らないし、ワンパンチでダメージ与えるから手数要らないし、カネロ的には合理的かつ必然的な回答だったのかもしれない。
僕はそうなってからのカネロに興味を失ってしまった。
パッキャオが衰え、メイが引退し、人気者のラテンアイコンにマーケットを牽引する役が回ってきた。
そして彼は試験に合格しつづた。
ゴロフキンに黒星を与え、コバレフを倒し、その他のタイトルホルダー達を軒並みやっつけてみせた。
その過程で自分のスタイル(そしてパワーに)に自信を深めていっただろう。
だが、スキルを磨き続けることをせず、スピードという要素を蔑ろにし、パンチングパワーを過信したことのツケを今日払わされた。
強気なマッチメイクは評価できる。
ただ相性もあるからね。
ビボルとの再戦で失ったものを取り返したいだろうが、止めた方が良いと思う。
どうしてもやるならテキサスとか圧倒的なホームグランドでないとダメだな。
テキサスなら今日の試合でも多分ドロー判定だから。