Saturday 31, August 2019
O2 Arena, Greenwich, London, United Kingdom
Commission - British Boxing Board of Control
Promoter - Top Rank - Bob Arum, Matchroom Boxing - Eddie Hearn
Matchmaker - Brad Goodman
Media United - Kingdom SKY Box Office, USA ESPN+
Lightwight Contest, 12 Rounds
マッチアップ:★★★
スリル:★★
スキル:★★★★
印象度:★★★
アマスーパーエリートの看板背負ってプロ入りしたロマチェンコは然して長くないキャリアの中で徐々に戦術とスキルのアップデートを行なっており、
良い進化を遂げてきているんだなというのが解る試合内容。
遺産を食いつぶすのではなく、それを生かして増やせるタイプなんだね。
そのあたりは同じアマスター出身のリゴンドーと異なる。
高度なスキルの生かし方の違いだ。
オフェンスで生かさなければ意味がないし、客受けするかどうかもプロボクシングでは大事。
ロマチェンコの試合は大概ワンサイドの展開だが倒し屋ではないので起承転結明確ではない。
ただスタイルの一貫性と万能性の融合を図っていることにポジティブな印象を持つ。
例えばアンドレ・ウォード(この試合のテレビ解説をしていた)のように相手に合わせて戦術を変えるようなことはしない。
そいういう意味での一貫性。
そして、前述のように彼のブラッシュアップされた攻防連動を突き詰めたスタイルは誰に対してもアドバンテージを有するという意味での万能性。
先日取り上げたナポレスに通じるものがあるのではないだろうか。
根本的な意味でね。
ロマチェンコにあってナポレスにないのはスピードだ。
逆にナポレスにあってロマチェンコにないのはパンチングパワーだ。
だから強みが違うはずなのだが戦略が似ているのはディフェンスにプライオリティーを置いていないからだと思う。
ノーガードのナポレスは言わずもがなだがロマチェンコも何気にオフェンシブマインドを前面に出すタイプであり、それはディフェンスルーティンから見て取れる。
そもそも何故こんなに相手に正対するのか?
サウスポースタンスのメリットが相殺されてしまうほどに。
こんなに正面を向いて戦うサウスポーって珍しい。
ロマチェンコの構えは、例えるなら整列時にやる「前へ習え」だ。
左右の手がスムーズに上がる姿勢であることがわかる。
体を斜めにして、つまり上げる手にアングルをつけて「前へ習え」をすると手前側の手に比べて奥側の手がスムーズに動作しない。
多くのサウスポーはタメを効かせるフォームで左を発射する。
リーチが長く上半身の大きいファイターほど顕著だ。
半身に構えて左を相手から遠ざけ、そこから体軸の回転を利して物理的にコンタクトパワーを稼ぐ。
強いパンチを繰り出せるが読まれやすく初動からコンタクトまで時間かかる。
的中率を上げるためには他の戦術とのからみを含めて工夫がいるのだ。
ロマチェンコの打撃フォームにはタメを産む要素がほとんどない。
よく言われるノーモーションとは違う。
「強い左を当てようとするのではなく軽い右と軽い左を時間的間隔を空けずに当てる」
確率の低い10の力の単発左ストレートを狙うのではなく、
3の力の右と5の力の左を確率よく当て続ける。
つまり左右の手をスピーディーにスムーズに連動させられるかどうかがキモ。
一般的なコンビネーションブローとはちょっと発想が違うのではないだろうか。
「左右同時当て」みたいなイメージか。
もちろんそれは極端でナンセンス表現なのだが、パンチの繋ぎを短くすることによる効果を狙っているのではないだろうか。
ディフェンスに関しては、ガードを上げてはいるがガードはほとんどしない。
相手の反撃に対するリアクションは先ずボディワークで回避を図ろうとし、
防ぎきれないと判断するとフットワークへ移行する。
ステップバック、サイドステップ程度でちょっと距離を作る程度だが。
で、直ぐまた距離を詰めてボディワークと連動しながら手を出し始める。
この一連の工程を無限ループの様相で繰り返す。
相手が疲弊してギブアップするまで。
基本的にファイタータイプの戦術だよね。
そう見えないのは、ディフェンスルーティンが独特だからだ。
あくまでガードは保険であり、オフェンスと連動させやすいボディワークを優先させることで独自のオフェンシブスタイルを構築している。
無敵かというと、うーん、耐久力に疑問符が付くのでそうとも言えない。
リナレス戦は敗北寸前だったし、この試合でもキャンベルのパンチで効いた場面があるにはあった。
負けるときは多分一発食ってカウントアウトされるパターンではないか。
ロイ・ジョーズJrのように。