西岡利晃へのエール

<ライト級10回戦 アレクシス・アルゲリョ vs ホセ・ルイス・ラミレス/1980/11/14/米国 フロリダ マイアミ>

西岡vsドネアまであと1ヶ月ちょい。
ビッグネームのドネアに対して西岡がどんな戦い方をするのか興味は尽きないのですが、サウスポーの利点を最大限生かした戦略を立てることを期待しています。
西岡の強みは緻密なディフェンスワーク。
最近の試合ではほとんど打たれていませんし、ディフェンススキルだけならドネアより上。
実際、試合になればドネアのパンチのほとんどは当たらないでしょう。
この試合に限ってドネアが戦い方を変えてくるとは思わないからです。
予想外のアングルから予想外のタイミングで打ってくるようなことはないでしょうし。
ただ、避けているだけでは勝てません。
ペースを取られてしまうとポイントを取りずらくなるからです。
最近のドネアはオフェンスを相手に読まれていて的中率はあまり良くない試合が続いていますが、単に倒せないというだけで試合は無難に勝利しています。
つまりここぞというタイミングで攻勢を取ってドネアを上回るオフェンスのインパクトを残して欲しい。


劣勢の試合をほとんど経験していないドネアは受けにまわると意外と脆い可能性もあります。
素人なりに参考になる試合を探しました。
で、アルゲリョvsラミレス。
結果はスプリットデシジョンでアルゲリョの判定勝ちですが、ラミレスには気の毒なスター救済ジャッジの典型です。
確かに試合全体を通してアルゲリョが攻勢を取っている場面が多いのですが、ラミレスのディフェンスワークの良さもありほとんどパンチは当たっていません。本来、好戦的なサウスポーのファイタータイプであるラミレスですが、意外と受けに回ったときもしぶとくて、相手の攻撃を無難に受け止めることができるんですね。ディフェンスワークの特徴は小刻みなフットワークで最適なポジションをキープしていることと右半身を上手く盾にしている点です。
がっちりとブロッキングしているわけではなくリードブローを出しつつ自身の正面から右側面にかけてを守っています。ですからアルゲリョのように左のブローの巧みな使い手にも効果的なディフェンスができるのです。
アルゲリョ得意の左フック(ショート、ロング、上下の打ち分け、アングルを変えてのダブルなどバリエーションは多い)はほぼ封じられていました。ポイントはラミレスの右側面のリスクマネジメント力。
これってサウスポーだからできる技なんではないでしょうか。
アルゲリョの左の脅威が薄れてからはラミレスの真骨頂であるプレッシングが功を奏し始めます。
右のショートをアルゲリョが打てないこともありラミレスは打ち終わりを執拗に狙って右フックから左ストレートの単調ですが効果的なコンビネーションで迫ってきます。
で、6Rにアルゲリョついにダウン。
しかも結構効いていましたね。
ここで決めてしまえないのがラミレスの限界なのかな。
まあでも試合は問題なくラミレスの勝ちでしょ。
ジミー・レノンが判定結果を読み上げる間、アルゲリョは神経質にリング内を歩き回っていて、勝利の確信がもてない様子ありありです。
アルゲリョはこの試合の2戦後に英国のジム・ワットに勝ってライト級タイトルを獲得します。
ワットもサウスポーですからラミレス戦はテストマッチの要素が強かったのかもしれません。
でも明らかにワットよりラミレスの方が強い(笑)
その後アルゲリョはラミレスと再戦をしませんでした。
やりにくさを感じたのかも知れませんね。

この試合のキーはラミレスの攻守のモード変換の巧みさだったと思います。
ディフェンスモードにあるかと思いきや絶妙のタイミングでオフェンスモードに切替えてくる。
そのメリハリの付け方にさしものアルゲリョも対処できなかったという感じです。

http://boxrec.com/list_bouts.php?human_id=8152&cat=boxer

攻勢をかけるタイミングという点で良いケーススタディになるのではないでしょうか。

西岡利晃のインテリジェンスに期待申し上げます。