8年ぶりの墓掘りネタ。
フォーカスするのは”EL Chapo”エドウィン・ロサリオ。
80年代に活躍したプエルトリカンのライトウェイトだ。
若いボクシングファンでも名前くらいは聞いたことあるだろう。
ロサリオについては、彼が現役中に何試合か観ていたこともありとても印象深いファイターの一人だ。
僕の中では中南米出身ハードヒッターの代名詞が彼なのだ。
かつて極東の島国のボクシングファンだった子供の頃のボクが、唯一情報を得られるメディアであったボクシング雑誌の記事を読んで誇大妄想していたミステリアスなハードヒッターが二人いた。
一人はハイメ・ガルサ、もう一人がエドウィン・ロサリオだった。
ガルサはあのウィルフレド・ゴメスがずっと敬遠し続けたJrフェザーウェイトのトップランカーで、確か38勝36KOのレコードを誇っていた。
が、実際に試合観たら、
「ん!」
イメージとのギャップに落胆した。
まあただのブンブン丸だったのだ。
ファン・キッド・メサに左フックを合わされてあっけなくKO負けしてメッキが剥がれてしまった。
その辺のネタは以前書いたことがある。
7年以上前だが。
一方のロサリオに関しては、最初に観た試合のインパクトが凄かった。
タイトルホルダーになる前、拳の怪我をする前のエドウィン・ビルエト戦だ。
あの右の一発には強烈なインパクトを受けた。
ロサリオはどのパンチも強いのだが、特に右ストレート(ライトウェイトとしては短身なこともあるが、やや下のアングルから放たれる独特の軌道で、フックというよりストレートだろう。カウンターのショートでもない。)が別格に強い。
両脇が極端に空いた妙なフォームで小刻みなステップを踏みつつ忙しくミッドレンジをサークリングするのがロサリオ流。
ジャブはあまり突かない。
で、アングルを見つけるやいきなりシャープな強打を振るってくる。
追い込み方も実に上手く、フットワークはオフェンス側のギアしかない。
そこは若い頃のタイソンに少し似ているかな。
そしてタイミングとコンタクトポイントを計る勘が鋭く、
これ以上ないというほど寸分狂い無くかつ一点に力が集中する。
力まず必要十分な力で最大限のインパクトを与えるオフェンスで仕事を完遂してしまう。
これはナチュラルボーンハードヒッターにしかない能力で、他のレジェンドとしては海老原博幸も同様のものを持っていた。
最近よく観るボクシング系のYouTubeチャンネルがロサリオを取り上げていたので動画を貼っておく。
動画の中でロサリオがジムの鏡の前で右腕を目一杯伸ばすストレッチのようなシャドーのようなフォームチェックのような見慣れないトレーニングシーンが出てくる。
それを見て妙に腑に落ちた。
そしてこの記事を書こうと思う切欠にもなった。
「なるほど。」
ロサリオの強い右は意図を持った訓練により磨かれていたんだなと。
細かい解説は避けるが、シフトウェイトを最大限生かす方法を彼なりに模索していたのではないか。
タイソンとは同門(マネージャーが同じ)だがキャリア年表はほとんど重ならない。
拳の怪我以後多少凄みが薄れたこともあり彼の全盛期は20歳頃だったと思う。
観るべき試合は、エドウィン・ビルエト戦、ホセ・ルイス・ラミレス第2戦、ハワード・デービス戦、ヘクター・カマチョ戦、リビングストン・ブランブル戦あたりかな。
ワンサイドで負けた試合もポツポツ(J.Cチャベス戦とか)
やや小柄でフィジカル的にあまり恵まれていなかったためかラッシングパワーのあるファイタータイプを苦手にしていたように思う。
倒し屋なんだけど所謂一発屋ではない。
タイミング合わせの巧さはあったがカウンターパンチャーというわけでもない。
現役で一番イメージが近いのはノニト・ドネアかな。
決め手が左フックと右ストレートの違いはあるが。
捨てパンチがなく、コンビネーションで崩そうとせず、隙を突いて強打をねじ込むタイプで、ある意味勘に頼ったボクシングとも言える。
そのためやや単調でペース支配感は薄い。(カマチョ戦の惜敗はそのあたりに起因する)
だがKOシーンの残像が観戦者の脳裏に焼き付き、いつまでも記憶から消えない。
こういうファイターが本来的な意味でのKOアーティストなのかもしれない。
ボクオタ的にはそう定義しても良いかなと。